あらすじ
翌朝、慎太郎は見知らぬ女性の身体で目を覚ます。それは昨夜言い争っていた「あっぽん」こと、埼玉に住む主婦・西田篤子だった。一方、篤子もまた高砂の実家で、浪人生・慎太郎の身体に入れ替わってしまっていたことに気づく。互いに「相手の性別・立場の方が楽なはずだ」と決めつけていた二人が、まさにその相手の人生をそのまま生きることになってしまうのだ。
この物語は、SNS上でありがちな「男は/女は」という不毛な対立構造そのものをモチーフにしている。慎太郎は篤子の身体で家事・育児・パートの理不尽さや体力的消耗を、篤子は慎太郎の身体で受験のプレッシャーや親の期待、思うようにならない自分への苛立ちを、それぞれ「他人事」ではなく自分の現実として体験していくことになる。どちらか一方が「本当は大変なんだ」と正しさを証明する話ではなく、性別を入れ替えることで「相手も相手なりの苦しさを抱えている」ことを二人が身をもって思い知っていく——そんな、不毛な男女論争そのものを皮肉るような構成の入れ替わりストーリーになっている。