あらすじ

彼の名は、後に大陸のあらゆる戦史書に刻まれることになる。だが本人は、最後の日までそれを望んではいなかったという。 大陸暦二〇世紀の前半、エルデシア大陸は静かに軋みはじめていた。工業の煙突が空を覆い、鉄路が国境を越えて延び、無線塔が夜も休まず言葉を運ぶ。豊かさと引き換えに、どの国も牙を隠さなくなっていった時代――後に「大陸大戦」と呼ばれる長い戦乱の、まだ始まる前の話だ。 エイゼンライヒ国。鉄と規律を美徳とするこの国は、その年、奇妙な儀式を執り行った。国家の存亡を賭けた大戦を前に、異界より力ある者を招き入れる――そんな、本来なら誰も本気にしないはずの秘術に、国の中枢が縋ったのである。 儀式の間に立った十二人の若者は、たしかに規格外の力を示した。剣を握れば鋼を断ち、拳を握れば城壁を砕く。将軍たちは歓喜し、統領は満足げに頷いたという。 ただ一人を除いて。 「あの、すみません……自分、何も出せないみたいで」 そう呟いたのは、黒髪の、どこにでもいそうな青年だった。名を、黒崎レン。歳は十七。剣も握ったことがなければ、拳を鍛えたこともない。ただ一つ、彼に与えられた力は――誰も見たことのない、地味すぎるものだった。 《アイテム超強化》。 物を、強くする力。それだけだ。

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小説を読もう2026/07/11
  • 現在の作品強化倍率∞ ~最弱スキル《超強化》だけで大陸を制した男~