あらすじ
ウェブ制作会社、株式会社Muséeでチーフデザイナーとして働く日色菫 28歳。
毎日始発から深夜まで働いている彼女の少ない楽しみは、帰り道、隣人の窓辺を眺めることだった。
揺れるカーテンの隙間で、透き通るほど綺麗な金髪、捲ったシャツから伸びる細い腕が、イーゼルと向き合っている。
憧れのように、勝手に慕っていた。
そんなある日、「風呂釜が壊れる」という事件が勃発する。彼女が取った行動は、この大義名分を掲げて隣の部屋に突撃するというものだった。
——しかし、彼女は想像もしていない。
女性だと思い込んでいた隣人が、無口で不機嫌な年下の男だということも。被写体になるよう要求される、自分の姿も。
顧客の望む「成果物」の為に働く菫と、自ら「作品」を創り出す葵。
あやふやな関係のまま、熱帯夜の古いアパートで、二人は少しずつ互いを求め始める。