あらすじ
中央局が「配達不能」と判定した手紙を、クラリス・ヴェインは届けてしまった。
風標は消え、中継塔は朽ち、台帳から村の名は消えていた。
それでも空には、まだ箒一つ分の細い風路が残っていたからだ。
だが中央局にとって、それは功績ではなかった。
命令違反。
越権行為。
危険な独断。
かくしてクラリスは、郵便組合を追放される。
半年後。
辺境の町外れで、彼女は小さな私設郵便屋を開いた。
看板に掲げたのは、ただ一文。
配達困難郵便、承ります。
婚礼の日までに母へ届けたい手紙。
地図から消えた村に住む人への便り。
中央局が諦めた、けれど誰かがまだ待っている手紙。
赤い判を押されたからといって、想いまで届かなくなるわけではない。
旧風路を読める追放郵便魔女クラリスは、今日も箒にまたがる。
「不能ではありません。困難です。困難なら、まだ仕事になります」
誰にも届けられないとされた手紙を届ける、追放郵便魔女の辺境配達ファンタジー。