あらすじ
すべてを与えてくれる存在があった。
半世紀前に生まれた人工知能「ヌース」は、すべての国民の脳と繋がり、迷いも、不便も、争いさえも、この国から消し去った。調べることなく問いの答えはわかり、働かなくても生活は満たされ、誰もが穏やかに生きている。それが、この国の当たり前の日常だった。
少年ソウタも、その一人だ。母の作る朝食の匂いで目覚め、週に二日だけ「登庁」する父を見て、少し誇らしく思いながら育った。平和で、便利で、満ち足りた国。それを疑う理由など、どこにも存在しなかった。
――あの日までは。
完璧なはずのその国で、ソウタは何を見てしまうのか。