あらすじ
いったい、いつから誰が言い始めたのか、この国には、不老不死の仙人がいるという。この世界のどこかには、仙人が住む神仙境があるという。
そして、ここ、滬徳《ことく》で、『滬徳案内屋』を営む男、〝楽園案内人〟劉子驥《りゅう・しき》は、桃源郷に行った事があるという。
そう——滬涜には、『滬涜案内人』という職業がある。
案内人になるのに、資格は要らない。
ただ滬涜に通じ、人脈があればいい。
案内人の多くは観光案内を主な仕事としているが、少し顔がきく案内人なら仕事や住居も紹介している。
観光がてら、滬涜にはどんな職業があって、開業したり就職するにはどうすればいいのか、相談に乗る。
だが、案内人の始まりからして堅気ではない事から、彼ら案内人の事を、調子のいい事を言ってお客を騙す詐欺師、悪質な犯罪者だと思っている者も少なくない。
もちろん、真っ当な滬徳案内人も存在する。
彼らに頼めば、滬涜の五大道楽が楽しめる色々なところに連れて行ってもらえるし、ちゃんとした住まいも仕事先も紹介してもらえる。
〝楽園案内人〟劉子驥も、そのうちの一人である。
滬涜最大の商店街、南京路の路地裏にひっそりと軒を構える、劉子驥の滬涜案内屋、『優游涵泳《ゆうゆうかんえい》』。
——〝楽園案内人〟、劉子驥の元には、今日はどんなお客がやって来るのか。