あらすじ
たとえばね
だれかに、空は青く澄んで眩しいと言われたら
僕は、そうか……と言って
あらかじめ、手をかざして空を見上げる
だけどごめんね
ほんとうは、僕には青くも見えないし、眩しくもないんだ
真っ赤な林檎だよ
だれかが、そう言ったとしても、赤でもないし、紅くもないんだ
じゃあ、何色なんだって思うよね?
答えは簡単
……何色でもない
それでも時折見えるのが
あの真夜中の海の色なんだ
だから……
きみにだけは、見えないままでいてほしい
限りなく漆黒に近い
あの青を……
──
たとえば
おまえが、晴れ渡った空を曇天だと言ったなら
俺は、ああ、そうか……と言って
空に目を細め、かざした手をそっと下げる
わかってるよ
おまえにはまだ、蒼空の青は眩しすぎるんだよな
あの林檎は何色なの?
おまえが、そう尋ねるなら、赤でもなく紅でもない、真っ赤だと俺は答える
わからないなら、それでいい
知りたいなら、俺がなんだって教えてやる
だから……
俺にだけは、見せてほしいんだ
限りなく漆黒に近い
その青を……
一緒なら必ず
綺麗な青だと、笑い合って言えるはずだから
【 失色与彩 】
───
※本作は、色彩を失い夜道をひとり歩む少年と、色彩豊かな昼道へと連れ出すために強引に、されどどこまでも誠実に寄り添い続けると決めた少年との、恋愛や性愛(BL)を一切超えた先にある「魂の救済」を描いた現代ドラマです。
(※本編の合間には、ちょっとした日常の会話劇や超短編『幕間』も収録していく予定です)