あらすじ

公爵アルトゥールは、人前では滑らかに詫び、祝い、人の心を掴む——そう思われていた。 けれど本当は、言葉の下手なこの男のために、妻アデーレが陰で全ての言葉を用意していた。 詫び状も、祝辞も、部下への労いも。彼女はそれを一度も、自分の手柄だと言わなかった。 ある夜、讒言が公爵の耳に入る。「奥方が旦那様の言葉を奪い、操っている」と。 疑心に呑まれた公爵は、妻に背を向けて言い放つ。「もう俺に言葉を与えるな。お前の言葉などいらない」 アデーレは、ただ一度だけ微笑んで、何も弁明せずに屋敷を去った。 その日から、公爵はうまく詫びられなくなった。祝いの席で言葉に詰まり、部下は離れ、 人の胸に届く一言が、どうしても紡げない。すべての言葉が、彼女のものだったと気づいたときには、もう遅い。 ——彼女が最後に飲み込んだ一言を、公爵が自分の言葉で継ぎにいくまでの、静かな物語。

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カクヨム
カクヨム2026/07/10
  • 現在の作品「お前の言葉などいらない」と妻を遠ざけた公爵——それきり、彼の詫びは誰の胸にも届かなくなった