あらすじ
空には、風路と呼ばれる魔力の道がある。
郵便魔女はその風路に乗り、箒で町から町へ、国から国へ手紙を届ける。
だが、風標の灯が消え、中継塔が朽ち、村の名が台帳から消えれば、中央局は赤い判を押す。
配達不能。
クラリス・ヴェインは、その判が嫌いだった。
旧風路の残留魔力を読むことに長けた彼女は、中央局が「もう飛べない」と判断した空に、まだ箒が通れる細い流れを見つけることができた。
そしてある日、配達不能とされた異議申立書を届けたことで、郵便組合を追放された。
数か月後。
辺境の町外れで、クラリスは小さな私設郵便屋を開く。
看板には、ただ一文。
配達困難郵便、承ります。
中央局に見放された手紙が、今日も彼女の店へ持ち込まれる。
配達不能ではありません、少し、困難なだけです。
これは、追放された元郵便魔女が、誰にも届けられないとされた手紙を届けながら、辺境で少しずつ必要とされていく職業ファンタジー。