あらすじ
ある日、通勤電車のホームで「異界渡り」というスキルが生えた。
最初はただの引きこもり用ワープだと思っていた。違った。これは――世界と世界を、股にかける権利だった。
剣と魔法の世界では、使い捨てライターが「無詠唱の火」として金貨に化ける。獣人の交易都市では、こっちの世界のガラクタが宝物に化ける。仕入れ値ゼロ、リスクも文字通り“別世界”。桐生迅は、七つの世界を渡り歩いて、静かに、確実に、荒稼ぎしてきた。
商会を持ち、護衛を雇い、各世界に倉庫を構え、値段のつかない札を手札に積んで――そうして五年。
そんな折、地球に「ダンジョン」が現れた。
世界中が上を下への大騒ぎ。国家がパニックを起こし、SNSが「異能」で沸き立ち、かつて迅を使い潰した連中が、ようやく手にした低級スキルで英雄気取りを始める。
――で。
その“最初のダンジョン”の第一階層で、みんなが必死に殴ってるスライム。あれ、俺、三つ隣の世界だと食用で流通してるやつなんだよな。
手札の次元が、違う。
安く仕入れて高く売る、ただそれだけの物語。ただし舞台は、七つ以上。痛快・多世界交易ファンタジー、開幕。