あらすじ
東京の大手化粧品会社、澄花堂コスメティクス株式会社の商品企画部に所属する澪標凪紗は、朝の会議室で試作品の香りを確かめるたびに、同期の鷺沼透羽の声に心を揺さぶられていた。
透明な小瓶、紙ムエット、まだ眠る街の光。言えない気持ちは仕事の言葉に隠れながら、少しずつ熱を帯びていく。
新しい朝用スキンケア商品の企画は、香り、容器、言葉を変えながら形になっていく。凪紗は、透羽に言葉を拾われ守られ、近すぎる距離に戸惑う。 削ったはずの本音は香りの奥で何度もよみがえる。
透羽もまた、凪紗のまなざしを大切に思うほどに、自分の感情を仕事に隠してしまう。朝の光の中では平気なふりをして、夜の静けさの中で想いが形になる。商品の完成が近づくにつれ、仕事と恋の境界は曖昧になっていく。
商品発表の日、二人は完成した香りの前で、信頼だけでは片付けられない温度を認め合う。朝に残る香りは、もう一人で抱えるものではなかった。