あらすじ
高校に入学した春、僕は通学電車で一人の女子生徒を見かけた。
彼女は人混みに紛れてしまいそうなほど静かな人だった。けれど、いつも大切そうに本を抱え、ページをめくるたびに感情を映すその瞳から、いつしか目が離せなくなっていた。
毎朝同じ電車に揺られ、同じホームに立ち、ただ彼女を眺める日々。本を愛おしそうに扱う仕草や、紙面に向けられる真っ直ぐな視線を見つめるうちに、僕の中で何かが少しずつ変わっていく。
そんなある日の通学電車で起きた小さな事件が、これまで交わることのなかった僕たちの距離を、ほんの少しだけ近づける。
これは、本になりたいと願った僕と、本を愛する彼女の、小さな出会いの物語。