あらすじ
「お前は正しすぎる。この家にはいらない」
侯爵家の帳簿を立て直し、領地の破綻を防ぎ、兄が見落とした契約の罠まで指摘した令嬢リディア。
だが、その有能さを疎まれた彼女は、父から追放され、婚約者からも「君は妻には向かない」と婚約を破棄されてしまう。
行き先は、王国最北端。
待っているのは、四十を過ぎた元軍参謀――ヴィクトル・ヴァルツァー辺境伯。
彼には奇妙な噂があった。
何人もの令嬢を「花嫁候補」として迎えながら、誰一人として妻にせず、全員を送り返している、と。
ところが、リディアの招請状にはあり得ない一文が記されていた。
『招請者指定候補 リディア・グレイスフォード』
彼女は、最初から名指しされていたのだ。
そして北境へ着いたリディアに、ヴィクトルは顔立ちも持参金も尋ねなかった。
代わりに問われたのは、道中の轍、村の煙突、馬の消耗、橋脚の異音。
その能力を見抜いたうえで、彼は告げる。
「なるほど。君は飾りではないな」
――だが。
「君を妻にする気はない」
やがてリディアは知る。
「送り返された」と噂された令嬢たちは、没落などしていなかった。
商会主。
補給隊長。
学校長。
彼女たちは捨てられたのではない。
この北境で力を身につけ、自分の名前で生きるために「送り出された」のだ。
そして、ヴィクトルがリディアを呼んだ本当の理由は――。
『単なる救済対象にあらず。採用候補として招請』
実家で奪われ続けた才能を、初めて正当に認めてくれた偏屈な男。
帳簿の向こうに生きる人々を知り、北境を救っていく令嬢。
やがて王都の家族は、彼女を捨てた代償を支払うことになる。
これは「必要とされれば愛される」と信じていた女性が、
自分の名前と人生を取り戻し、
最後には、自ら愛する人と居場所を選ぶ物語。
追放ざまぁ×お仕事改革×年の差じれじれ恋愛。