あらすじ
公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子から夜会の場で婚約破棄を宣言された。
聖女の嘘の涙。
貴族たちの冷たい視線。
そして、家の名誉のためにわが娘を切り捨てた父。
裁判は形だけ。
証拠は偽造。
証人は買収。
誰一人として、リリアーナの話に耳を傾けなかった。
「誰か……わたくしの話を、聞いてください」
処刑台の上で絞り出した最後の願いは、青空の彼方へ消えていった。
誰にも届かないまま、リリアーナの人生は幕を閉じた。
――しかし、物語はそこで終わらなかった。
目覚めると、そこは見知らぬ現代日本。
世界三大映画祭すべてを制覇した唯一の日本人・黒崎誠の娘、黒崎美月として転生していた。
映画館で初めて映画を見て涙を流した四歳の日。
父の撮影現場でカチンコを手にした五歳の夏。
カメラ、脚本、照明、編集――映画のすべてを貪欲に吸収しながら、美月は静かに誓いを刻んでいく。
いつか、前世の真実を映画にする。
誰にも聞いてもらえなかった声を、スクリーンという形で世界中に届ける。
「映画は嘘をつく。だからこそ、真実を映せる」
世界が認めた名匠の父は、娘に一切甘くない。
現場では助監督と同じ仕事を課し、脚本には容赦のない評価を下す。
それでも、その言葉だけが美月の道標だった。
国内最高峰の映画大学へ進学し、前世の痛みを込めた卒業制作が圧倒的な高評価を得る。
しかし父は静かに告げる。
「まだ、人生を撮れていない」
前世の記憶という、誰にも証明できない痛みを抱えた少女が、映画という武器を手に真実を世界へ届けるまでの物語。
処刑された悪役令嬢の、もう一つの人生が今、始まる。