あらすじ
市役所で死亡届を扱う江村孝は、母の死を機に、十数年ぶりに実家へ戻る。
遺品整理の中で見つけたのは、亡き父の本と、少年時代の自分が書き残したラテン語の一句。
かつて孝は、その言葉を「嘘に勝つための言葉」だと信じていた。
父の死を隠した母を責め、自分だけが真実の側に立っていると思っていた。
しかし、実家に残された湯呑み、薬袋、使い古された布巾、そして妹・由香の言葉によって、孝は少しずつ知っていく。
母がついたものは、本当にただの嘘だったのか。
自分が信じてきた真実は、誰かを傷つけるための刃ではなかったのか。