あらすじ
「なぜお前がここにいる」
本邸薬草庫で納品札を確認していたセレーナは、夫ジルベルトからそう言われた。
政略結婚で結ばれた二人は、初夜からずっと別室。
それでもセレーナは、実家ベルク伯爵家とローレン薬草商会とのつながりを守るため、本邸薬草庫の納品確認や商会対応を続けてきた。
ところがその日、ジルベルトは若い女性ミリアを連れていた。
薬草箱を抱え、泥のついた外套のまま震える彼女は、セレーナを見るなり言う。
「奥様は亡くなったはずでは……」
夫は、セレーナを死んだことにして、ミリアを後妻候補として囲っていた。
しかもミリアは、郊外薬草園で半年も働かされながら、報酬を受け取っていない。
怒鳴るより先に、セレーナは紙と羽根ペンを取る。
後妻候補は、賃金の代わりにはなりません。
まして、相手の妻が生きているなら、なおさらです。
死んだことにされた正妻と、都合よく使われた後妻候補。
二人がまず書くのは、夫宛ての請求書だった。