あらすじ

三日ぶりに家へ戻った日、埼玉県川口市にある田原家の前で、私は足を止めた。

 玄関先には白い菊が二列に並べられ、門のそばには黒と白の葬儀案内が掲げられていた。庭には見知らぬ車が何台も停まり、近所の人や親戚たちが黒い喪服姿で、声を潜めながら出入りしている。

 一瞬、家を間違えたのだと思った。

 けれど表札には、はっきりと「田原」と書かれていた。

 私は玄関の引き戸を開けた。中には線香の匂いが満ちていた。

 客間の中央には白木の祭壇が組まれ、供花、白木の位牌、焼香台がそろえられている。黒い額に入った遺影が、その真ん中に置かれていた。

 写真の中の女の子は、私が一番好きだったベージュのニットを着ていた。長い髪を肩に垂らし、穏やかに笑っている。

 けれど、その顔は私ではなかった。

 私は玄関で立ち尽くした。手足の先が冷たくなっていく。

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アルファポリス
アルファポリス2026/07/08
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