あらすじ
【あらすじ】
灰が降り、灰から生まれる獣「スラグ」が人々の生活を脅かす世界。十七歳の少女アリアは、かつて繁栄したであろう文明の残骸「遺物」を漁って暮らしている。
アリアは、幼いころに両親を失い、遊牧の民ラルカに拾われて育ったが、原因不明の病『灰惑い』を疑われ追い出されてしまう。灰惑いは、やがてスラグになる。いつか自分も化け物になるかもしれない。その恐怖を抱えたまま、人を避け、行方不明になった父と母を探す旅を続けていた。
孤独にも慣れ、生活にも困らなくなったある日、ネアと名乗る少女と出会う。素性は一切不明。会話も噛み合わない。父を探す旅の邪魔になると、ネアを拒むアリア。しかし、この出会いが、アリアを母の秘密を巡る旅に連れ出すことになる。
世界の手触りを全身で受け取るネアと過ごすうち、固く閉ざされたアリアの心は次第にほどけていく。しかし、灰惑いの症状は容赦なく進行し、スラグに変わってしまう自分とネアを連れていくことの間でアリアの心は葛藤する。
風おじさん、ナヅキ、マーレン、エレン、旅の途中で出会う様々な人に支えられ、二人の旅は東へ。母の秘密は、灰の秘密、そして世界の秘密に繋がっていく。
取り戻される人の温もりは、アリアの救いとなるのか、それとも——。
【登場人物】
アリア……十七歳。両親を探す旅のついでに、旧文明の残骸を漁って暮らす少女。暮らしも、狩りも、父の手つきを真似て独学で身につけた。極端な人嫌いで人見知り。おまけに気が強くてすぐ怒る、めんどくさい性格。
ネア……アリアの家の前に倒れていた、素性不明の少女。無邪気で食いしん坊。見るもの、触れるもの、食べるものを全身で楽しみ、一緒に旅をするアリアの閉ざした世界を少しずつ広げていく。倫理観と優先順位がどこか人間離れしている。
イーモン……アリアの家の近くに拠点を構える遺物屋の老人。口は悪いが、一本気。ラルカを追われたアリアを拾った育ての親。料理が趣味だが腕は悪い。
ナヅキ、ヨマ、マーレン……旅の先で出会う人々。面倒見の良い男、寡黙な老剣士、騎士を名乗る少女。それぞれが、アリアの旅の意味を少しずつ変えていく。
【世界観】
遥か昔に繫栄した文明が滅びた世界。原因は分かっておらず、その歴史も途絶えている。人々は世界の残骸を遺物として利用しながら、地域ごとに独自の文化を築いて生活している。
空気中の灰によって光の屈折率が変わっており、月が赤い、太陽が暖色、空が白い、星は見えない。葉の色も基本赤く、この地域では夏から秋にかけて青黒い紫に近い色に変わる。
・灰
この世界に日常的に降る謎の物質。灰は降る。積もる。消える。灰については文化によって様々な考え方があるが、基本的にはスラグの問題もあり、あまり良いものとは思われていない。
灰の極小の粒子のせいで精密機器が使えず、遺物に頼らない文明レベルは中世~近代初期程度。
・スラグ
灰の濃い地域に突然発生する灰色の獣。動物がスラグに変質すると時間を経るごとに人間のような見た目に近づいていく。灰と共に遥か昔から存在する脅威で、誰がスラグと呼びだしたのかは分かっていない。
動物も、人も、スラグに変質する過程で「灰惑い」と呼ばれる病に侵され、背中から黒くなり、濃い灰色に変質していく。
・国家
スラグが人類共通の問題として日常に蔓延る世界で、人々は分断され、各地で独自の文明を築いた。
灰を読み、灰を避けて暮らす遊牧の民ラルカ。
灰に沈み、略奪と闘争を繰り返す殻層街。
灰を憎み、スラグと戦う戦士の国ヴェルド。
灰を信仰し、灰惑いを神子と崇める宗教国家エーファ。
灰を観察し、世界を観測する学術都市エルデヴィア。
遺跡の所有権やスラグの問題をめぐり、各国はそれぞれの信念のもとに付かず離れずの関係を続けている。