あらすじ
「事件ではありませんね」
そう言われて、警察から帰される人がいる。
行方不明になった家族、繰り返される嫌がらせ、消えた遺品、誰にも信じてもらえない小さな違和感――。
そんな「事件にならない依頼」が持ち込まれるのが、町の小さな便利屋『神崎便利サービス』だ。
店主の神崎弘樹、五十三歳。
三十年以上勤めた県警を退職し、今は家具の移動や草刈り、遺品整理まで何でも請け負う便利屋として静かに暮らしている。
だが、現場に残されたわずかな違和感や、人の何気ない仕草を見れば、刑事として培った勘が真実を見逃さない。
警察が事件として扱えなくても、困っている人がいる限り、神崎は依頼を断らない。
今日もまた、一つの「事件にならない事件」が、便利屋の扉を叩く。
これは、警察より先に真実へたどり着く元刑事が、人々の心に残されたわだかまりを解きほぐしていく、小さな便利屋の物語。