あらすじ
かつての大戦により魔法が衰退し、代わりに石炭と蒸気、そして歯車が支配するようになった荒廃した世界。
表向きは「修復師」、その実態は重度の古書オタクである技術屋アルドは、大戦期の多脚歩行兵器を魔改造した『移動書斎「オールド・ベル」』を駆り、まだ見ぬ知識を求めて錆びた荒野を旅していた。
旅の護衛を務めるのは、大柄で無口ながら家庭的で料理上手な用心棒・ガレット。
そして旅の頭脳は、移動書斎そのものを肉体とし、アルドを「マスター」と呼びつつ正論で刺してくる、慇懃無礼で毒舌な精霊オールド・ベル。
『本日の朝食も昨日と全く同じ、干し肉のスープですね。私に胃袋がなくて心底救われました』
「うるさい。文句があるならお前が朝食を作ってみせろ」
訪れるのは、砂に埋もれた古い線路や、百年前に放棄された実験施設の跡。
崩れかけの紙の繊維を特殊なインクで繋ぎ合わせる技術屋と、獲れた獲物で温かいスープを作る用心棒。
お互いの過去は詮索しない。ただ、それぞれの役割を完璧にこなし、日々の糧と一冊の古書を手に入れていく。
滅びゆく世界の片隅で、独自のこだわりを抱えた男二人と一機の精霊が織りなす、煤煙と古書の匂いに満ちた旅の記録。