あらすじ

共感が「生存資格」になった社会。他人の物語に集まる共感の総量がスコアとなり、一定の閾値を持つ者だけが本格的な医療を受けられる。  槙島湊、二十九歳、スコア三桁。かつて地方で人気を集めた元モデルの母は、若さという商品を売り尽くし、酒に沈み、いまは誰にも忘れられたまま死の淵にいる。治療に必要なスコアは、桁がいくつも足りない。  母を救う方法は、ひとつだけあった。母の人生を「わかりやすい悲劇」に書き換え、もう一度バズらせること。湊が訪ねた代筆屋・久瀬が提示したのは、実在しない「悪役」を母の人生に書き込む構成案だった。  ――でも、母の人生に悪役はいない。誰にも搾取されず、誰にも裏切られず、ただ歳をとって、忘れられただけ。誰も悪くなかった。そしてこの国では、誰も悪くない話は、いちばん安い。  嘘を世に出せば、嘘の母が本物の母を生かす。出さなければ、本物の母は本物のまま死ぬ。公開ボタンは、湊の指の下にある。  消費される側と、消費させる側。ふたつの罪が交差する、静かなディストピア。

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カクヨム
カクヨム2026/07/08
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