あらすじ
シド・アーシェンは、前世で誰にも看取られることなく机に突っ伏したまま孤独に死んだ。家族も、友人もいない。月曜日の朝になるまで、誰一人として彼の死に気づかなかった。
そして転生した先――剣と魔法の世界《アナスタシア》でも、その人生は大きく変わらなかった。
勇者アルドリック率いる勇者一行の陰で、誰よりも働き、誰よりも努力しながら、功績はすべて黄金の勇者へと渡っていく。二年間、誰にも認められない「縁の下の力持ち」として戦い続けた末、十二歳のある日、「お前は役立たずだ」と告げられ、追放される。
怒りに拳を握る。
だが振り下ろすことなく、そのまま闇へと歩き去った。
一年後――。
シドは世界にわずか四人しか存在しないSランク冒険者となっていた。
それは才能でも、神から授かった都合のいいチート能力でもない。
彼の力、《ワールド・ゲイン》。
倒した魔物の能力を自らのものとして取り込み、終わりなき努力によって唯一無二の力へと進化させる異能。
誰も見ていなくても努力をやめない。
誰にも認められなくても学び続ける。
その積み重ねだけが、彼を最強へと押し上げた。
しかし――一匹の竜を討ち漏らした。
その結果、一つの村が滅び、多くの命が失われる。
すべては自分の責任だった。
瓦礫の中で、彼は家族を失った四人の赤ん坊を見つける。
シラ。
レン。
ミラ。
ヴェラ。
行き場のないその小さな命を抱き上げ、彼は静かに誓った。
「今日から、俺がお前たちの父親だ。」
それから十年。
辺境の村アッシュフェルドで、シドは四人の娘たちと穏やかな日々を送っている。
村を魔物から守り、壊れた屋根を修理し、前世の知識で誰も知らない料理を作り、この世界では何百年も先にしか生まれない道具を生み出す。
毎朝、家の裏の訓練場で娘たちを鍛え、必ず一緒に朝食を囲む。
そして夜になると、家の階段に腰を下ろし、満天の星空を眺めながら家族との時間を過ごす。
これは――
何も持たなかった一人の男が、すべてを築き上げる物語。
父を二度と独りにはさせまいと、世界さえ敵に回す四人の娘たちの物語。
罪が使命へと変わり、使命が愛へと変わり、そして愛が、この世界にまだ名前すら存在しない奇跡へと変わっていく物語。
――いつも誰かを支え続けてきた男が、今度は「一人で背負わせない」と誓う家族に支えられる、優しくも壮大なファンタジー。