あらすじ
アリシアは悩んでいた。ローゼンが他の人に取られるのではないかと。
北国の領主であるローゼンと共に、久しぶりに南国の実家へ帰ることになったのだが、どうしても一つだけ不安があったのだ。
それは、南国の女性たちの距離感が近すぎること。
落ち着いていて、背が高く、礼儀正しく、少し近寄りがたい雰囲気があるのに、実際には誰より優しいローゼン。そんな彼を南国へ連れて行けば、女性たちに声をかけられるに決まっている。しかもローゼン本人は、自分がどれほど目立つ男なのか、まるで分かっていない。
だからアリシアは、道中の馬車で何度も念を押した。
知らない女性に誘われてもついて行かないこと。腕を取られそうになったら避けること。南国の作法だと言われても、頬への口づけは受けないこと。
しかし、到着してほんの数分目を離しただけで、ローゼンは見知らぬ女性たちに囲まれてしまう。
案の定すぎる光景に、アリシアは黙っていられない。さらに、昔から人のものを欲しがる悪女セレーナまで現れ、南国の作法や交易路を口実にローゼンへ近づこうとしてきて――。