あらすじ
八年前、竜の嫁に選ばれたセラ・アルネは、花嫁衣装を裂いて村から逃げ出した。今は王都南区で「竜の嫁入り相談所」を営み、嫁入り、奉公、家出、逃亡などの名で人生を決められそうな少女たちの相談に乗っている。
ある日、竜の嫁にされそうな少女ニア・ラトンが叔母に連れられて訪れる。そこへ竜山領の交渉官リュシアン・アルヴァレイが現れ、「竜山領は花嫁を求めていない」と告げる。竜の嫁入りは、竜の名を利用した村と境界管理局の仕組みだった。
セラはニアを連れ、八年ぶりに故郷へ戻る。村長は、セラの嫁入りは「未完」であり、ニアはその代替だと主張する。だが、花嫁帳、竜車、裏帳面から、娘たちが花嫁ではなく労働力や奉公人として各地へ送られ、名を変えられていた事実が明らかになる。
王都の白鐘施療院では、死んだことにされていた元花嫁エイナ・ラトンが生きていた。彼女は、名前を奪われた花嫁たちが密かに交わした手紙を守っていた。セラたちは新聞社と協力し、竜の嫁入りの実態を告発する。
さらに西の谷村で、病弱な姉アリアを表向きの花嫁にし、その妹ミナを実際の移送対象にする計画を阻止する。旧鉱山道の先にある第七坑口では、子どもたちの名を変え、移送先を決める現場が発見される。セラは子どもたちの名を聞き、行き先を無理に決めず、空欄を本人に返すことを誓う。
王都に戻ったセラたちは、旧職工組合会館を「空欄の家」として開く。そこは、行き先を奪われた者が、自分で次の行を選ぶまでの場所だった。黒幕オルディスはなお彼女たちを泳がせようとするが、セラはリュシアンと共に決意する。もう誰も、勝手には嫁がせない。