あらすじ
大学の水曜一限、法学概論。
地方出身の瀬尾祐介は、年配の女性教授が担当するその授業で、京都から来た女子学生・沢井佳乃と隣り合わせる。
彼女はいつも瀬尾の右側に座った。授業が終われば、二人はキャンパスから駅までの短い坂道を並んで下る。契約、代理、親族、相続、法人。法が人と人との関係に名前を与えていく一方で、二人の関係には最後まで名前がつかない。
恋人でも、明確な友人でもない。
ただ、一年間だけ同じ時間に隣にいた人。
何も起きなかったはずの記憶が、卒業後の人生の中で、ふとした「わたし」の音とともに蘇る。