あらすじ

引っ越してひと月の部屋で、換気扇の音が消えた。羽根は回っている。風もある。音だけが、しない。 翌日は冷蔵庫。その次は、時計の秒針。耳鼻科の検査は異常なし。試しにスマホで録音してみると――録音には、ちゃんと音が入っていた。鳴っていないのは、機械のほうではないらしい。 友人は言う。「気にしすぎだよ」。誰も気にしていない。気にしているのは、私だけ。そのあいだにも、音は、一つずつ消えていく。上の階の足音。電話の向こうの声。蝉の声。揺れているのに、鳴らない風鈴。 そして、ある朝。自分の足音が、しなかった。 夏の音で満ちた世界から、静かに抜き取られていくものの話。

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小説を読もう2026/07/07
  • 現在の作品録音には、ちゃんと音が入っていた