あらすじ
「エリシア・ヴァルクレイ。貴様との婚約を破棄する」
王太子アルベルトから、身に覚えのない罪を着せられ、聖女ミレーヌへの嫌がらせを理由に追放された伯爵令嬢エリシア。
しかし、前世で法令と会計帳簿を扱っていた彼女には分かっていた。これは恋に目がくらんだ王太子による婚約破棄ではない。辺境にあるヴァルクレイ家の水路と鉱山を奪うための、計画的な排除である。
追放の夜、エリシアは亡き兄ルシアンが遺した《影の継承契約》を見つける。
――女である自分が家を継げないのなら、兄の名を継げばいい。
髪を切り、男装し、死んだはずの伯爵令息「ルシアン・ヴァルクレイ」として王都へ戻ったエリシアは、帳簿、契約書、取引記録を武器に王太子派の不正を暴き始める。
そんな彼女の正体に早くから気づいていたのは、「黒の公爵」と恐れられる冷徹な青年ローデリクだった。
「君は、誰かに決められた役を演じるために生きる必要はない」
男として家を守るのか。女として自分の人生を取り戻すのか。
そして、かつて自分を捨てた王太子と聖女を、法と証拠で裁くことができるのか。