あらすじ
金木犀の花言葉は「初恋」。香りはあんなに強いのに、花は葉の裏に隠れて咲く。
高二の秋、僕は通学路の金木犀の下で、ちょうど一年前の「音」を聞くようになった。聞こえてくるのは、去年の僕と、幼馴染・遥の会話。彼女は去年の十月、告白できないまま隣の県へ転校していった。
再生される日々をたどるうち、僕は当時気づけなかった彼女の言い差し——「……ううん、なんでもない」の続きを、一年遅れで拾い集めていく。
香りが終われば、去年の声も終わる。過去は変えられない。呼びかけても届かない。それでも、返事の方法がひとつだけ残っていた。
——金木犀は、たまに二度咲く。これは、一年遅れの返事の物語。