あらすじ

皇帝は私の容姿を気に入り、私を後宮に入れようとした。  やんわり断ると、彼は私の家族を皆殺しにしたうえで、改めて私に尋ねた。  それでも後宮入りを拒むのか、と。  私はその場で笑いながら、彼の腕の中へ身を預けた。  誰も知らない。  私は千年を生きる石の妖で、生まれつき、どんな生き物にも子を宿らせる異能を持っている。  入宮してから、私は毎日、彼に「滋養の薬湯」を飲ませた。  彼は吐き気に苦しみ、魚や肉の匂いを嗅いだだけで顔色を変えるようになった。  かつて人を殺すことに眉ひとつ動かさなかった暴君の腹は、日に日に丸みを帯びていく。  やがて彼は、私が選んだ薄桃色の衣をまとい、床に膝をついて崩れ落ちた。 「月、頼む……私は産みたくない……」  私は彼の耳元で、そっと笑った。 「陛下。もう胎の音は、ずっと私の耳に響いておりますよ」  皇帝は私が怯えると思っていたのだろう。  けれど私は、満面の笑みで彼の懐へ入った。  彼は知らない。  私は断崖の下で天地に育まれた石の妖で、生まれつき気まぐれな性分だ。  子を宿させ、産ませる力を持っている。  残虐で人殺しを好む皇帝に、私の子を産ませる。  それほどふさわしい罰は、ほかにない。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/07/07
  • 現在の作品後宮入りを迫られたので、暴君を孕ませました