あらすじ
「婚約破棄は致しません」
王宮の夜会で、王太子セドリックから突然婚約解消を告げられた公爵令嬢レティシア。
理由は「君は冷たい」「契約や数字ばかりで、人の心を見ていない」というものだった。
けれど、その婚約は王太子一人の感情で破棄できるものではなかった。
王家とグラシアス公爵家が交わした正式な契約。
さらに、その婚約には王国の港湾整備事業を支える巨額融資契約も結びついていた。
レティシアが求めたのは、愛の継続ではない。
正しい手順。
守られるべき契約。
そして、王家の信用だった。
謝罪しても、契約は戻らない。
感情で破った信用は、記録と責任でしか取り戻せない。
やがて王太子は助言者の席へ下がり、静かな第二王子が王家の未来を担い始める。
港湾事業は王家一人の功績ではなく、商人、隣国、労働者、そして契約を読む令嬢の手で動き出す。
「冷たい令嬢」と呼ばれた彼女は、誰よりも人を守るために制度を整えていただけだった。
これは、婚約破棄された令嬢が王太子にすがる物語ではない。
王家の信用を守り、契約を正しく終わらせ、自分の名前で未来を選ぶ物語。
婚約破棄は致しません。
ただ、あなたを主語から外しただけです。