あらすじ
ここは吉原。
そこは夢を売り、一晩で色とりどりの花を咲かせる場所であった。
大きな遊郭から暖簾分けされた小さな妓楼、扇屋。
今宵も灯りをともせば、美しい遊女たちが客を迎える。
その裏で黙々と働く一人の若い衆、坂田弥太郎。
誰よりも優しく、誰よりも花たちを支え続ける青年には、誰にも明かせぬ秘密があった。
夜になると彼は、吉原一の花魁「月花太夫」として咲く。
触れることを許されぬ月。
昼は男として生き、夜は花魁として夢を売る。
二つの名を背負った青年の前に現れた一人の男、守屋忠介。
やがて二人の出会いは、吉原という籠に閉じ込められた運命を、大きく動かしてゆく。
これは、身分も性別も偽りさえも越えて、一人の青年が本当の月になるまでの物語。