あらすじ
*登場人物
心――小学五年生。歌うことが好きで、朝の校庭を走りながら声を整えている。
恵二郎――心の同級生。計画表を作るのが得意で、夏歌発表を支える。
みどり――中学生。eスポーツ部の体験会を児童館で開こうとしている。
乙女――幼稚園児。言葉にはしないが、痛そうな人を見ると絆創膏を持ってくる。
一晟――心の父。家事を担いながら、心の不安を静かに受け止める。
寿――児童館の警備員。白いベンチに巻かれた銀色の鎖の鍵を預かっている。
*あらすじ
六月下旬、小学五年生の心のクラスは、皆勤賞のごほうびとして児童館発表で一曲を流せることになる。心は大好きな夏歌を歌おうと張り切るが、児童館の放送設備と回線は故障寸前。しかも庭の白いベンチには銀色の鎖が巻かれ、誰も座れなくなっていた。
同じころ、中学生のみどりは児童館でeスポーツ部の体験会を開こうとしていた。歌とゲーム、子どもと大人、昔の思い出と今の町。ばらばらに見えた願いは、古いネットワークスイッチと白いベンチをきっかけに、少しずつつながっていく。
けれど本番前、心は大人の何気ない言葉に傷つき、歌えなくなってしまう。声が出ない心を前に、友だちや町の人たちは、歌を一人に背負わせない方法を考え始める。
銀色の鎖が外れる夏の夕方、心は知る。歌えない日も、誰かに声を預けていいのだと。