あらすじ
五十歳。
人生は、もう詰んだと思っていた。
家族の不仲、就職氷河期、学歴格差。
時代と環境の波に押されながら、水瀬灯子はいつの間にか「どうせ」と呟くことに慣れていた。
そんなある日、灯子は家庭料理の店「さざんくろす」にたどり着く。
そこにいたのは、五歳の男の子・星野朔太郎。
朔太郎は、五歳の誕生日に家を出た。
黄色い傘と青い長靴、SIMの入っていない古いスマートフォンを手にして。
理由はたったひとつ。
「ここは、自分の居場所ではない」
バス停で座り込んでいた朔太郎を見つけたのは、「さざんくろす」のマスター・南雲遼介だった。
帰ってくる場所「さざんくろす」。
これからを話し合う場所「North Pole」。
南十字星と北極星、二つの居場所に導かれながら、灯子と朔太郎は、それぞれの止まっていた人生を少しずつ動かしていく。
人はみんな、幸せになるために生まれてきた。
たとえ五十歳でも。
たとえ五歳でも。
これは、「どうせ」で閉じかけた人生に、もう一度灯りをともす物語。