あらすじ
日本の町工場で鉄を削っていた職人・柴田源吾は、異世界の山奥で、口は辛辣だが世話焼きなエルフ助手リュシアと静かに鍛冶をしていた。
ある日、血まみれの女が工房へ墜落してくる。
人間軍の武器職人だと誤解され、いきなり斬りかかられたゲンは、咄嗟に手元の試作品を盾代わりに構えた。
次の瞬間――
あらゆる攻撃を弾くはずの魔鎧が、真っ二つに裂けた。
「貴様……何者だ」
「買い被るな。俺はただの鍛冶屋だ」
しかも女の正体は、領土の八割を奪われ、滅亡寸前まで追い詰められた魔王軍最後の王・ルヴィア。
「我が軍を勝たせてくれとは言わぬ。滅びぬための道具を、作ってほしい」
だが、ゲンは剣士ではない。
まともに戦えば一秒で首が飛ぶ。
彼にあるのは、魔法でも伝説のスキルでもなく、日本の町工場で身につけた職人の目だけ。
熱。
炭素。
歪み。
摩耗。
応力。
品質管理。
治具。
標準化。
そして、壊れた時に現場で直せる構造。
ゲンが最初に作ったのは、最強の剣ではなかった。
誰でも同じ角度で研げる治具。
魔力の弱い兵でも扱える“折れない短槍”。
壊れても部品交換できる“直せる鎧”。
泥道でも補給を止めない荷車。
地味な改善を積み重ねた結果――
これまで全滅していた小隊が、生きて帰ってくる。
一方、人間側では「神の奇跡」と呼ばれた聖剣が次々と折れ始める。
勇者は教会を疑い、奴隷鉱山と聖剣利権の嘘が露わになり、絶対だったはずの正義が崩れていく。
これは、魔王軍を征服者にする物語ではない。
戦えない町工場職人と、
捨てられることを恐れるツンデレエルフ助手と、
民を守れなかった誇り高い女魔王が、
使い捨てにされてきた者たちの「帰る場所」を、工房から作り直す物語。
――戦争に勝つ剣より、帰ってこられる鎧を作れ。
全40話完結予定。