あらすじ
婚約破棄というものは、一生に一度でもあっていいものではない。
それなのに私は、現実で一度、異世界で百回、婚約破棄を聞かされることになった。
現実世界で婚約者に別れを告げられ、意識を失った私が目を覚ますと、そこは異世界の夜会だった。
金髪の王子が、私に告げる。
「君との婚約を破棄する」
婚約破棄を最後まで言い切られるたび、低い鐘が鳴り、私は夜会の前へ戻される。
泣いても、怒っても、逃げても、証拠を出しても、先に婚約解消を申し出ても、最後には必ず同じ言葉を聞かされる。
百回目。
やけになった私は、菓子卓の粉砂糖を王子へ振りかけた。
王子はくしゃみをして、婚約破棄を言い切れなかった。
その瞬間、いつもの鐘は鳴らなかった。
そこで、ようやく気づいた。
婚約破棄されたから巻き戻るのではない。
婚約破棄を、最後まで聞いていたから巻き戻るのだ。
百一回目。
私は初めて、その言葉を遮る。
「そこまでにしてもらおう」
これは、婚約破棄される役目を降りた私が、異世界でも現実でも、自分の人生を取り戻す話。