あらすじ
異世界へ召喚された会社員・佐倉透には、魔力も剣の才能も、特別な加護もなかった。あるのは、危険を見つければすぐ逃げる臆病さと、失敗を避けるため周囲を観察する癖だけ。
しかし、逃げ道を選べば敵の罠を見破った天才軍師と称えられ、転んで土下座すれば古代の外交儀礼と誤解され、偶然起きた奇跡はすべて勇者の策略として広まっていく。仲間たちの活躍と数々の偶然によって膨らんだ伝説は、やがて透本人の意思を離れ、人々を戦場へ駆り立て始める。
偽りの英雄像によって命が失われたとき、透はついに自らが無能力者であることを公表する。それでも仲間たちは彼を見捨てなかった。
怖いからこそ危険に気づき、力がないからこそ他人を頼り、誰かを置き去りにしたくないから立ち止まる。最弱の一般人は、最強の勇者ではなく一人の臆病者として、仲間とともに魔王討伐へ挑む。