あらすじ
自損事故で最愛の兄を失った若月春人は、それ以来、部屋から出ることすらできなくなっていた。家族が皆いなくなった家の中で膝を抱え、自責の念に押しつぶされそうになっていた彼は、ある日突然訪ねてきた叔母の高瀬紅子からこう言われる。
「もしかするともう一度、兄の輝明に会えるかもしれない」
犯した罪から逃れられない春人は、兄に死をもって裁かれたい一心で彼女に導かれ、不思議な海辺の館を訪れることとなる。
一方、海辺の館の主である霧島惣一郎は最愛の弟である静を失い、彼と過ごしたその館の中で、一人暗い決意を固めていた。崖から落ち、冬の海を彷徨った挙句に、無惨な姿で見つかった静の亡骸を見て以来、ずっと考えていたことがあったのだ。
「崖に近づこうともしなかった静が、崖から事故で落ちるはずがない、静は、誰かに殺されたのだ」
その思いのもと、惣一郎は静の死から一年後の命日となる日、静の死の当日に館にいた人々を再び集めることを決意する。弟を殺した者に、死によってその罪を贖わせるために。
兄を死なせた春人と、弟を守れなかった惣一郎。後悔と罪悪感を抱えた二人とともに人々が集うとき、館はその秘密を静かに示し始める。