あらすじ

祖父の遺品整理をしていた拓也は、蔵の奥から一枚のレコードを見つける。  ラベルはなく、日付だけが殴り書きされたその盤に針を落とすと、聞こえてくるのはただの雨音だった。  曲でもない。声でもない。なぜ祖父は、こんなものを五十年近くも大切に隠し持っていたのか。  古い日記帳をたどるうち、その録音の夜、近所の店で火事が起き、住み込みの従業員が疑いを被ったまま姿を消していたことを知る。  祖父にとって兄のように慕っていた相手だった。  ノイズに埋もれた雨音を丹念に拾い直していくと、そこには決して聞かれてはならなかったはずの物音が――そして一言の呟きが、微かに残されていた。  真相をたどるほどに、拓也は知りたくなかった祖父の顔と、一つの事実に近づいていく。  雨の音だけが知っていた、五十年間の沈黙。その奥に眠っていたのは、救いか、それとも代償か。

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エブリスタ2026/07/05
  • 現在の作品雨音レコード