あらすじ
「雨の日に降るのがブルーベリーだったらいいなって思いません?」
前の席で後ろ向きに座る彼女は、僕の机に両手で頬杖をついてにこりと微笑んだ。
四階建ての校舎の最上階にあるこの空き教室には屋上に当たる雨音がよく響く。
「なんでブルーベリーなんだよ」
「水が降るよりブルーベリーが降るほうが嬉しいでしょう。甘くておいしいですし」
「道も靴も真っ青になるぞ」
「青い水たまりに虹は映るんでしょうか」
「転がってる実を片づけるのも大変だ」
「鳥さんたちはごはんに困りませんね」
噛み合わないやり取りに僕は肩を落とす。
拝島はそんな僕を見て楽しそうに笑った。胸元の赤いリボンが小さく揺れる。
「で、なにか用か?」
「なに言ってるんですか先輩。今日は雨ですよ?」
彼女の言葉で、僕は小さく息を吐く。
雨の日は憂鬱だ。空気はじめじめとして息苦しいし、傘を差しても靴下や袖は濡れて貼りつく。気圧のせいか頭も重い。
そして何より。
「私、先輩のことが好きです」
雨が降るたび、後輩が僕に告白してくるからだ。