あらすじ
これは、その青年の短き物語。激しい戦火が吹き荒れる地。戦闘部隊に入れず、通信部隊として派遣された一人の不器用な青年がいた。青年は、一度見た他人の文字の癖を完璧にコピーできる「人の文字を真似る」という特技を持っていた。戦う技術はなくとも、文字が書けない戦友たちの代わりに家族への手紙を何枚も代筆してきた、誰にでも優しい従順な青年だった。泥の坂道を駆け上がったとき、彼の目の前を一羽の真っ白な蝶がふわりと通り過ぎる。硝煙の煙の中、右からは激しい銃声、左は不気味なほどの静寂。青年は、真っ白な蝶を信じるように、激しい銃声が響く「右の道」へと果敢に飛び込んだ。それから、数ヶ月にわたる手紙を渡す任務が、すべて終わりを迎える――。不器用ながらも、実直に、命がけで役割を全うし続けた青年が辿り着いた、本当の真実。すべての任務を終え、みんなが待つ家の扉を開けたとき、その手に抱えられた12本のバラの上へ、一羽の真っ白な蝶がふわりと止まった。選択を信じた青年が掴み取る、もう一つの未来の記録。