あらすじ

ローカルWebメディアの夏企画として、編集者の瀬尾ユウは「西武新宿線沿いの怪談投稿フォーム」を公開した。新井薬師前、沼袋、野方、都立家政、鷺ノ宮。 届く投稿はどれも弱い。夜道で足音がした。踏切の向こうに人影が見えた。 読者に届く文章にするため、瀬尾は投稿を少しだけ怖く直す。母の傘を足し、存在しない弟を書き加え、恋人の記憶を捏造する。 ところが、修正した内容が翌日から投稿者本人の現実で起き始めた。記事を削除すれば止まるはずだった。だが削除ボタンを押すたび、怪談に使われた人間の一部が現実からも消えていく。 やがて瀬尾は気づく。投稿者たちは怪談を書いているのではない。 編集者が怖く直し、読者がもっと怖くしろと求めるたびに、誰かの人生が怪談へ書き換えられている。 登場人物紹介 瀬尾ユウ(29) ローカルWebメディアの外部編集者。怪談記事、都市伝説まとめ、心霊スポット紹介の下請けで生活している。霊感はない。怪談を読ませる文章に加工する技術だけがある。いつか自分の名前で怪談本を出したいと思っているが、口にしたことはない。 牧田奈緒(34) Webメディア編集長。企画の良し悪しをアクセス数だけで判断する。口癖は「もう少し怖くできる?」。悪意はない。ただ、その一言が何を引き起こすか知らない。 犬飼律(26) 投稿フォームを構築したエンジニア。不動産系サイトの構築が本業で、怪談には興味がない。牧田の大学の後輩。隠しフィールドは作っていないと断言したが、フォームには説明のつかない項目が増えていく。 佐伯美澄 最初の投稿者。新井薬師前の踏切で誰かに見られていた、とだけ書いた。瀬尾が「三年前に亡くした母と同じ傘」を足したところ、翌日「どうして母の傘のことを知っているのか」と問い合わせてきた。 岸本航太 沼袋の投稿者。帰り道に子供の足音がした、とだけ書いた。瀬尾が「幼い頃に亡くした弟」を足したところ、家族写真に見知らぬ男の子が写り始めた。 A-09 コメント欄に現れる匿名アカウント。投稿のたびに「オチが弱い」と書く。正体は最後まで明かされない。

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カクヨム
カクヨム2026/07/05
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