あらすじ
「お前の作る飯はまずい。今日限りで食堂から出ていけ」
冒険者ギルドの食堂で三年間タダ働きさせられてきた元おさんどん令嬢のスズナ。給金は雀の涙、考案した出汁も下処理もすべてギルドマスターの手柄に。そんな彼女に突きつけられたのは、自分でシチューを三杯おかわりしておきながらの理不尽な追放宣告だった。
孤児上がりの下働きには、すがる未練などない。彼女が持ち出したのは、縁の欠けた古い片手鍋ひとつ——前世、日本の下町で営んでいた定食屋『向日葵亭』の、母の形見だけ。
実はスズナには現代日本の記憶があった。喚かず、泣かず、淡々と。それが最後の意地。けれど布の隙間で、欠けた鍋の縁には見覚えのない古代文字が、淡く光っていて——。
「もう、誰かのために我慢して作るのはやめる」
見習いのミントゥと共に新たな一歩を踏み出したスズナの料理は、やがて冷酷無比と恐れられた竜人将軍の胃袋を——そして王都の覇権を、欠けた鍋ひとつで握ってしまう。
追放ざまぁ&飯テロ&ほのぼの恋愛。強面将軍が涙する、お腹が空く短編完結。心から「おいしい」と思える味で、誰かの恋しい思い出に寄り添う物語。今日も、向日葵亭は開店です。