あらすじ
スキルボードが出ない。ただそれだけで、俺の人生は「派遣」だった。
十五歳で働き始めて十六年。時給1,210レン。
討伐は正団員様のお仕事。血抜きと解体と雑用は、派遣の仕事。
食堂は正団員の二倍の値段、ロッカーは無し、朝会は扉の外。
名前ではなく「派遣さん」と呼ばれて、もう本名より長い。
そんな俺は三十一歳のある日、レベルが上限に達した。
すると突然、三十一年間沈黙していたスキルボードが現れて、こう言った。
『長らくのお勤め、誠にありがとうございました。未払い分のスキルポイントを全額一括支給いたします。なお、利息は付きません』
——999,999ポイント。
普通の人が一生かけて稼ぐのは、五千ポイントほど。桁が二つおかしい。
かくして最底辺の派遣冒険者は、毎晩4ポイントずつ(一度に振ると熱が出るので)、こつこつ最強になっていく。
これは、スキルの振れなかった男が、
・慇懃無礼なスキルボードと言い合いをしながら
・派遣あるあるの理不尽を噛みしめ
・それでも誰かのために殿を務め
——やがて「今さら戻ってきてくれ」と土下座されて、丁寧にお断りするまでの物語。
怒りません。恨みません。ただ、静かに辞めるだけです。
だって俺、時給ですから。
※本作に登場する派遣制度は異世界のものです。現実の派遣制度に似ている点があっても、たぶん気のせいです。