あらすじ
三光ボウルが今月で閉まる。
七十八歳の父が、最後に一度だけボールを投げたいと言い出した。
四十六歳の僕は、押し入れの片づけを中断して、父を連れて古いボウリング場へ向かう。
返ってくるボールのように、何度も投げては戻ってくる日々。
中途半端に器用で、何者にもなれなかった自分。
太いマジックで「全員で行く」と書いた、青くて湿った大学のノート。
その夜、駅裏の「星くず食堂」では、二十年ぶりの仲間が最後の音を出すという。
店は閉まる。ギターは狂い、肩は痛み、ミラーボールは回らない。
それでも、父は膝でリズムを取り、僕は小さなシェイカーを握らされる。
無理なら無理でいい。
でも、足首はもう一度だけ、動いてしまう。