あらすじ
電波時計の正確さを神と崇める男・洋と、懐中時計のネジを巻くことすら忘れるダメ男・ストリーシュ。二人は今日も今日とて、ポルシェGT3の維持費を稼ぐために泥沼の取引へ向かう。
一時間の遅刻を「時計の電波が狂ってる」と強弁するストリーシュに対し、洋の怒りは沸騰寸前。しかし、渡されたのは「脳の血管が詰まりそうなほど甘いカプチーノ」だった。
糖分で強制的に鎮静化させられた洋が、怒りをそのままステアリングにぶつけながら取引相手の元へ向かうと、そこには案の定、極上の地獄が待っていた。
汚物を撒き散らすような腐敗臭の男が放った「サプライズ」に対し、二人はGT3のドアを「物理的な挨拶」として活用。泥濘に沈む敵を横目に、闇から湧き出る無数の刺客を前にしても、ストリーシュは「ローンを払ってくれる太っ腹な奴」を探す余裕を崩さない。
「おい、せめて雨の中くらいはスマートに死なせてくれよ」
「悪いな。俺たちのローンは、地獄の業火でも焼け焦げねえんだよ」
GT3の咆哮が雨を切り裂く。これは、時間と金に追われる二人の、とびきり甘くて苦い逃走劇の序章である。