あらすじ
望んだのは【力】と【頑丈さ】。
抽選の結果は――熊でした。
十九歳の悠斗は、高校生に間違われるほど小柄な青年だ。
カフェでアルバイトをしながら家事をこなし、姉と二人で暮らす日々。母を亡くしたあとに残った家の借金を、姉は一人で背負おうとしていた。
「あんたは気にしなくていい」
その言葉の後ろに隠れ、守られているだけなのは、もう嫌だった。
ゲーム内で稼いだ通貨を、現実のお金に換えられるVRMMO『ヴァスタリア・オンライン』。
悠斗はバイト代を貯めて型落ちのVR機器を購入し、家族を支えるため、意を決してゲームの世界へ飛び込む。
ところが、彼に割り当てられたのは、全プレイヤーのわずか五%しか存在しない魔物種族。しかも、人型ですらない正真正銘の「熊」だった。
装備欄はアクセサリー以外すべて「装備不可」。
攻略情報はほとんどなく、図鑑にすら「情報求む」の文字。
何もかも手探りのスタートだった。
それでも、この大きな体は、誰かの後ろに隠れるためのものではない。
誰かを後ろに庇うためにある。
陽気なタコの先輩に妙なあだ名を付けられたり、街の案内板を真剣に読みすぎて掲示板で目撃されたり――。
現実では守られてばかりだった小柄な青年が、ゲームでは二メートルの熊となり、一歩ずつ「守る側」へ成長していく。
ちょっと不器用で、どこかあたたかい、熊の冒険と家族の物語。