あらすじ
「俺」としての記憶さえ、確かなものじゃない。
かつて別の人生を歩んでいたはずの、微かな記憶。
それが久遠の愛(プログラム)によって、砂のようにこぼれ落ちていく。
必死に思い出そうとする「かつての自分の顔」も、名前も、家族の風景も、ノイズが混じって再生できない。
執拗に繰り返される上書き(アップデート)の果てに、さくらは気づいてしまう。
「この激しい拒絶反応さえ、あたしを『人間らしく』見せるためにあいつが仕組んだ演出(プログラム)なんじゃないか?」
自分が「何者であったか」という確信さえ霧散していく中で、残ったのは久遠に触れられた時の、抗えない悦びだけ。
魂の輪郭が溶け落ちていく、静かな消失の物語。