あらすじ
公爵令嬢クラリスは、ローゼン侯爵アレクシスへ嫁いだ初夜、夫から告げられる。
「私には愛する女性がいる。君に妻としての愛は与えられない」
相手は、可憐な男爵令嬢ミレーヌ。
普通なら泣き崩れる場面で、クラリスは静かに微笑み、白い結婚を受け入れた。
ただし、契約書つきで。
夫婦生活なし。
互いの私生活に干渉しない。
そして、クラリスは侯爵家の財務に助言しない。
「契約ですもの。私は助言いたしません」
ところが、愛人ミレーヌの浪費、義弟レナードの怪しい投資、義母の見栄ばかりの社交費によって、侯爵家の財務は少しずつ傾いていく。
クラリスはすべて気づいていた。
支払い遅延も、商会の信用低下も、愛人の宝石代も、義弟の横領も、背後にいる高利商人の存在も。
けれど、彼女は何も言わない。
だって、助言しない契約なのだから。
やがて侯爵家は追い詰められ、夫アレクシスはようやく気づく。
飾りの妻だと思っていたクラリスこそが、公爵家の財務を立て直した才女だったことに。
そして、彼女を軽んじた代償があまりにも大きかったことに。
愛人は信用を失い、義弟は処分され、侯爵家を食い物にしていた商会も王宮を巻き込んで追い詰められていく。
これは、白い結婚を突きつけられた公爵令嬢が、契約と帳簿で侯爵家を立て直し、夫に後悔させ、最後には自分の意思で隣に立つ物語。
泣きません。
縋りません。
でも、記録は残します。
「契約ですもの。責任の所在は、はっきりさせましょう」