あらすじ
十年、十六箱の巣箱をわたくしが見てまいりました。ところが旦那様は仰るのです——「お前はもう用済みだ」。義弟に箱を渡し、わたくしは蔵の外へ。
分蜂の兆しは板の鳴りで分かる。継箱の頃合いは重さで決まる。煙を焚く間合いを外せば刺される。それを数えていたのは、わたくしの頭の中だけ。箱に残るのは巣であって、いつ何をするかではございません。
十六箱そっくり残して出ました。何ひとつ持ち出しておりません。ただ、翌年の分蜂で——蜂はわたくしの庭に来ました。
——お義弟様の箱には、蜜が溜まらなくなりましたわね。