あらすじ
王城の鍵は、全部で二百十一本ございます。お嬢様が婚約を解かれた日、わたくしはその全部を鍵盤へ戻して、貸出簿を閉じました。
恐れながら、と申し上げたのは一度きりです。記録室の扉が、開いたままでございます、と。殿下は「侍女ごときが」と仰いました。
ですのでわたくしは、ただの侍女として、鍵をお返しいたしました。どれをいつ替えるか、誰にお渡ししてよいか——それはもう、わたくしの覚えていることではございません。
閉ざしの月に、王都から噂が流れてまいります。砂糖が尽きたそうです。議事録が、写されたそうです。